Day.19 日本語で会話した日。

  • 2018.02.08 Thursday
  • 18:37



7/11 晴れ 95km
ハーフムーンベイ〜サンタクルーズ




すんごい寝てしまった。
やっぱり家って快適だ。寝袋&テント生活とは全然違う。


こーやってぷらぷら旅に出ているわりには時代の流れに疎いというか。airbnbというもののシステムを僕は全く分かっていないし分かろうともしない。覚えたら便利なシステムなんだろうなぁとは思うけれど。
もはや便利になることさえ面倒臭い。
普段誰か別の人が住んでいると思われる一軒家をリサさんとミシェルさんが借りていて、そこに僕も滞在させてもらったということなんだと思う。たぶん。
知らない人の家に勝手に上がりこんじゃった感があって、ちょっとイケナイことをしてる気持ちにもなったけど、一度眠ってしまえばどこでも同じ。久々の温かいシャワーとふかふかのベッドはとても快適だった。
日本で生活でしていると当たり前のように蛇口からお湯が出てくるわけだが、こうもサバイバルな生活が続くと、あらためてお湯って有難い。キャンプ場のシャワーは赤い蛇口をひねっても水しか出てこなかったし。ここ数日はずっとキャンプ泊だったから、ベッドで寝られることの幸福感といったらなかった。






泊めてもらったお礼に何かできることはないだろうかと考えた結果、僕は大道芸することに決めた。
というか、ホントは昨日レストランで二人と再会したときに何か一芸披露できたらいいんじゃないかと思っていたのだけど、根がシャイなこともあってずっとタイミングを逃してしまっていた。
結局ギリギリ別れ際になってようやく風船を飲み込む手品を披露できた。自転車で走り出す直前だったから、リサさんとミシェルさんは手品に驚いてるというよりも、手品が唐突に始まったことに驚いてるみたいだった。その様子をリサさんが僕のfacebookに投稿してくれたので、もし良ければ探してみてほしい。






スタートして早々に転ぶ。
荷物が重すぎる。





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平和なイタズラ。


しばらく走ったところでボトルに水が入ってないことに気がつく。勢いよくハーフムーンベイを飛び出してしまったから、水と食料を買い忘れていた。しかも運の悪いことにこの先ずーっとお店も何も無さそうな田舎道で、補給が期待できない。今すぐ喉が渇いている訳ではないのだが、この炎天下のなか水を持たずに走るのはちょっと心配だ。








延々と何もない道。
探してみると、飲めそうな水って案外見つからない。あったとしてもだいたい泥水。
なるべく体内の水分を失わないようにゆっくり走ったり、こぼれ落ちる汗を口に入れてみたり。本当にピンチのときには自分の尿を飲むといいらしい。どこかで拾ってきたしょーもない知識が頭をよぎる。万が一。万が一の場合はボトルを使ったほうがいいのだろうか。。できればボトルは使いたくないし直接飲む方法はないだろうか。と、バカなことを考えていると、遠くの方にガソリンスタンドが見えてきた。


水だ。。。水が手に入る。
アメリカのガソリンスタンドは大抵の場合コンビニみたいな売店がセットになっていて、自動車だけでなく僕たちのような自転車乗りにとっても大切な補給場所になっている。大丈夫だろうとは思っていたけれど、水が手に入ると分かった瞬間やっぱりすごくホッとした。砂漠のオアシスってまさにこんな感じなんだろう。
水は大切。
出発前にお父さんがそう言ってたのを思い出した。


コンビニで買ったミネラルウォーターを浴びるように飲んでいると、いかにも自転車旅行中という感じの二人組がわぃわぃと賑やかな雰囲気のままスタンドに入ってきた。僕と同じようにコンビニに直行して水を買っていて、なんだか可笑しかった。
縦にデカいわぃわぃした感じのおじさんと横にデカいわぃわぃした感じのおじさんの二人組は、仕事の休暇を利用してサンフランシスコからサンディエゴまでを自転車で走ってるのだそう。サンディエゴということは、つまりメキシコまで入りたいということ。目的地が同じだったことで僕たちは意気投合し、なんとなくそのままの流れで一緒に走ることになった。





そんなに本気を出さないでわぃわぃハシャギながら走るペースがちょうど良くて、とても楽しく、そしてとてもラクに走ることができた。どこに泊まるかも何も決めていなかったけど、とりあえずこの二人についていけばなんとかなるだろうし、長い目で見れば同じゴールに向かっているわけだから、もう何も考えずに、完全に頭をオフにして二人の背中だけを見て走った。進路を確認する必要もなく、泊まる場所を探す必要もなく。はしゃいでる二人のコメディを見ていたらいつの間にかキャンプ場に到着。
一泊5ドル。金銭感覚がいい意味で麻痺してきた。















テントの設営が終わったら近くのパブでビール飲もうぜ!という話になり”えぇよ”と、急いでテントを組み立てる。相変わらず二人はわぃわぃはしゃいでて一向に作業が進んでない様子。僕は先に設営が済んでしまったのでなんとなくキャンプ場内をぷらぷら散歩していたら、アメリカ人のおじさんに日本語で”こんにちは”と声をかけられた。まぁ僕は見た目も明らかに日本人だし、少し日本語を知っているようなアメリカ人から挨拶されることも多かったから、いつもの調子で”こんにちは”と返すと、今度はペラッペラの日本語で”どこから来たの?”と聞かれて驚いた。
聞けばこのフィリップさんというおじさんは30年ほど日本に住んでいたのだと。僕らと同じように自転車旅の最中で、ぷらぷらしていたらこの一泊5ドルのキャンプ場に行き着いたのだという。言葉が通じるということ以上に、醸し出す雰囲気がもう怪しさ満点で直感的になんだか面白そうだったから、クリスとチェイニーには申し訳ないのだけどビールのお誘いは断ってキャンプ場でフィリップさんと夕飯を食べることにした。夕飯といっても非常食で持っていたリンゴとピーナッツだけど。




あとはフィリップさんが持っていたあまーいドーナツ。
アリの行列できてたけどフィリップさん気にせず食べてたから僕も食べた。


久しぶりの日本語で会話が弾んだということももちろんあったけど、それ以上に、フィリップさんの経験してきた冒険話がとても魅力的で、夜まで話が尽きなかった。
無賃乗車の鉄道だけでアメリカ大陸を横断したこと。忍び込んだ貨物列車が全然違う方向に発車してしまったこと。世界一周の旅に出たのに、1カ国目の日本が楽しすぎて30年も過ごしてしまったこと。そのまま日本の大学に通ったこと。映画でも見られないような、現実の話。本当の冒険が詰まっていた。




今からだって何だってできるよ。
フィリップさんは、僕にそう言ってくれた。
ありきたりな言葉かもしれないけれど、フィリップさんの言葉は心の真ん中にズシンと響いた。
ちょうど30代に突入したばかりの自分は、ちょっと難しい時期なんだと思う。この先繰り返しの人生は過ごしたくないと思いながらも、次の一歩を踏み出せないでいることは自分でも痛いほどわかっている。この先どう生きていきたいのか、完全に迷子なんだ。だからなのか”この先なんだってできる”と言ってもらえたことでとても勇気付けられたし、実際に好きなように生きてきたフィリップさんを目の前にすると、とても説得力があった。


夜は少し寒くて、星がよく見えた。
クリスとチェイニーは知らぬ間に帰ってきてたみたいだった。
遅くまで話し込んでしまったし、シャワーは明日浴びることにしよう。どーせ水しか出ないだろうから。







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